夏色モノクローム
(ええ……?)

 今まで、朝のだるだる姿しか見ていなかったけれど、なんだこれは。
 この人、昼間は家の中でもきちんとした格好をしているらしい。

 青みがかかったサッパリしたグレーのセットアップ。生地にとろみがあって、大きめのシルエットのカーディガンに、タイトなパンツの組み合わせだ。
 インナーはシンプルに白。全部無地の組み合わせなのに、シルエットがとても綺麗に見える。
 それから――、

(独特な、においがする?)

 香水などではない。シンナーにも似ているけれど、もっと、独特の。おそらく里央も覚えのある香りだ。

(……絵の具?)

「どうした?」

 じっと考え込んでしまっていたのに、しっかり気付かれてしまった。里央はブンブンと首を横に振りながら、用意した菓子折を彼に渡した。
 志弦はというと、面食らったような顔をしながらも、ちゃんと受け取ってくれる。

「わかった。気持ちは頂いとく」
「あ、あの……!」

 用が終わったらすぐに家の中に入ってしまいそうだ。どうにか食い下がりたくて、里央はじっと彼の顔を見つめる。
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