俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd
「え、なになに?」

今の俺は何でも受け入れられるよ。

「お腹が空き過ぎて、お先にひとりで食べてしまいました」

だろうね、空腹なのはわかっていたよ。

「何を食べたの?」

あれと、これと、と指折りしながら教えてくれるが片手の指は全部折れてしまい、まさか両手でいくのか!と今更なグレイスの食べっぷりに身構えたが、結局片手で終わった。

5本の指で数えられたメニューはどれも店頭で立ち食い出来るもので、
彼女の実力からしたら、大したものじゃない。
俺とのディナーに影響はない。

「お誕生日じゃない、誕生日ディナー
 これから予約していいかな?」

グレイスは胃の辺りを押さえて了承した。
出陣可能みたいだ。

日が暮れかけて、若干風も強くなった。
潮風がグレイスの金髪を乱した。


ディナーの後、カリーナおすすめの夜の海を
見た。
月の光か、夜光虫の輝きか。
海は静かで波音が繰り返し繰り返し……

『朝早くの海も見てみたいです』と、
グレイスが言った。



その夜、スケスケをグレイスは着てくれた。
感動して、また俺は口を押さえた。
最上階から下の階に、俺の叫びを響かせる訳にはいかない。

気がついて、慌ててグレイスに説明する。
これはディナーを戻す前兆ではないと。

そして。
今宵、ゴールこそは決められなかったけれど。
前より3歩は進めた気がする。


ただ寄り添って。
ふたりで朝を迎えて。
明日の午後、王都に戻ったら。

狭くても良かったら。
俺の寝室で毎晩寝ませんか? と
尋ねよう。


明日の朝、ふたりで波打ち際を散歩する。

その時に。
< 20 / 33 >

この作品をシェア

pagetop