11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
最後のバレンタインデー

「……よし、できたよ」

麗奈の声を合図に目を開ければ、鏡に写ってるのが自分だとは信じられない。

中古とはいえ、奮発して買ったドルチェ&ガッバーナのミディ丈ブラックワンビ。いつもは緩くまとめるだけの髪も、おろして大人っぽくアレンジされてる。
メイクは少しキツイくらいの配色だけど、いつもは手抜きしてるマスカラやアイシャドウをしっかり塗られ、ラメ入りのチークまで使われてる。

いつもは薄いのに、メイクひとつでくっきりとした顔立ちになり驚いた。

「バッグはこれ、コートはこれ、靴はこれね。あ、香水も忘れずに!これ、トップノートはフローラルだけど、ラストノートまでにセクシーになってくから」
「……ありがとう、麗奈」
「ううん、アタシができるのはこれくらいだからさ……」

紙袋を差し出した麗奈は、大きな目からうるっと涙をこぼしてわたしをかばっと抱きしめてきた。

「……兄いとはもうだめでも、アタシたちは友達だからさ!」
「……うん、ありがとう。麗奈。わたしもそのつもりだよ…だから、これからもよろしくね」

泣き笑いの親友の背中をポンポンと叩いて、背中越しに時計を見れば……8時30分。
そろそろ出ないと、遅れてしまう。

「じゃあ、麗奈。いってくるね」
「うん、帰ったら…ううん、なにかあったらすぐLINEしなよ!どこにでも駆けつけるからさ!」

親友から勇ましい言葉をもらい、わたしは実家を出てタクシーに乗り込んだ。

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