11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
そして、3年後〜14年目のバレンタイン

「塚本さん、もうそろそろ上がっていいわ。お迎え行かなきゃだめでしょ?」
「あ、はい…すみません。では、お先に失礼します」

まだ残業はしたかったけれども、時間を見れば仕方ない。みんなに挨拶をした後、手早くロッカーで着替えて職場を後にした。

自転車を漕いで向かった先は、アパートに近い保育園。正門から小走りで教室に向かうと、名前を呼んだ。

「雅人(まさと)!」
「あ、おかーたん」

クレヨンでお絵描きしていたらしきわが子は、両手が派手な色に汚れてる。苦笑いしてウェットティッシュを出すと、丁寧に拭った。

「すみません、いつもお迎えが遅れて……」

先生に謝ると、「大丈夫ですよ」と微笑んでくださる。

「雅人くんは0歳から見てますからね。逆に思い入れがあって、私にはもう一人の子どもみたいなものです」

綾子(あやこ)先生はわたしより5歳上だけど、雅人が0歳児保育の頃からお世話になっているからか、頼れるお姉さんという感じ。実際LINEで色々相談に乗ってもらっていて、彼女がいなければここまで頑張れなかったかもしれない。


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