漆黒の女帝
ボロボロの着物を着た男性が磔にされている。そして、その男性を黒い着物を着た女性が熱を持った鉄の棒で体のあちこちを叩いている。鉄の棒が体に当たるたび、男性は泣き叫んでいた。

「な、何してるんですか!!」

北斗は黙って見ていることなどできず、岩の陰から飛び出す。北斗の声に女性が振り返った。闇のように黒く長い髪が揺れ、女性の顔がはっきりとわかる。釣り上がった目の下にはホクロがあり、肌は雪のように白く、唇は血のように赤い。恐ろしいほどの美しさを持った女性だ。

「だ、だすげで……」

磔にされた男性が泣きながら助けを求める。北斗が口を開こうとすると、女性は無表情のまま男性の口の中に棒を突っ込む。声にならない悲鳴を男性が上げる中、女性は笑みを北斗に向ける。

「ああ、私に逢いに来てくれたのか。嬉しいぞ」

女性が北斗に近付き、細い両腕を伸ばす。その光景がどこか不気味に見え、北斗は体を震わせた。



「おい、起きろよ!!」

体を激しく揺さぶられ、北斗は目を覚ます。目を開けた瞬間、口からはゼェハァと全力疾走した後のような息が漏れ、全身が汗で濡れていた。
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