#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化






『この度は新人俳優賞という輝かしい賞を頂き、本当にありがとうございます。監督をはじめ、共演者の皆様、スタッフの皆様、撮影に携わってくださった全ての方に感謝の気持ちでいっぱいです。この素晴らしい場所に立たせてもらえたのも、皆様のおかげです。』




そう言ってにこやかに微笑んでいた美聖は、胸の前に携えたトロフィーをちらりと見て、それから少しだけ困ったように眉を垂らして笑った。




『ああ、なんだろうな。このトロフィーがケーキだったら皆さんと一緒に味わいたいです。それぐらい嬉しいし、感謝を伝えたいです』




可愛らしい素直な言葉に、会場が笑いで包まれる。美聖の挨拶が終わり、司会者が意気込んだように彼へ質問をする。




『たくさん感謝の言葉が出ていた柊さんですが、今、一番感謝を伝えたい相手は誰ですか?』




司会者の質問に、美聖は綺麗な顔を少しだけ当惑させて、それから、まるで子供みたいに笑う。





『……一番、ですか』

『はい』




美聖は『一番…』と再度呟く。スーツでしっかりと決めた姿に似つかわしくない笑みに、会場中は彼の言葉に期待してしまう。



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