#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化




きっと以前までの美聖なら、息吹とこういう関係に踏み出したことすら、ファンに申し訳ないと思っていたはずだ。


それは突き詰めれば、息吹という存在を『アイドル』のみとして崇めていたわけで。



《──今日、"終わったら"一緒に帰ろう》


今朝の息吹の言葉が蘇る。



「(……俺って実はすごく欲張りなやつ)」



美聖が今、溢れだしそうなほど抱え込んでいるこの感情が、彼女を『黛 息吹』というひとりの女の子として見ている何よりの証拠だった。



鼻先に突き当たる夜風が冷たくて、美聖は首に巻いたマフラーに顔を埋める。タクシーで待つことも考えたけれど、できることなら、きちんと息吹を出迎えたい。



その時、関係者入口の扉が開く。中から出てきたのは、今朝家を出る時と同じ服装の息吹だった。少し遠くで待機していた美聖はすぐにわかる。


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