大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 先生の所に逃げ込みたいけど、入院していた奥さんが病院から帰ってきて自宅療養中。

 色々と無理っぽい。


 ピアノ教室なので、気兼ねなく足を向ければいいのだけど……

 地元を離れる直前、先生に不安な顔を見られて心配をかけたくない。


 しかたない、心を決めて家族と向き合おう。

 翌日の早朝には家を出て、駅へ向かう事になってるのだから。


 などと考えながら自宅の部屋で翌日の準備をしていたら、いつの間にか時刻は夕方の5時を過ぎていた。


「うそ、もうそんな時間!」


 7時ぐらいに両親そろって帰宅する予定なので、それまでに準備は終わるだろうと簡単に考えていた。
 
 
 ――次の瞬間


 ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。

 私は目を見開き、部屋を出て階段を下りる。

 インターホンのモニターへ視線を向けると、笑顔で手を振る両親の姿があった。



「帰ってくるの、7時ぐらいって言ってたじゃない……」



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