待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
最終章:運命

 私はその夜、帰ってきた柑士さんに「聞きたいことがあります」と言った。
 すると、柑士さんはわかっていたように頷く。

 二人でリビングのソファに腰を下ろした。

「柑士さん、私のおじいちゃんのこと知ってたんですか?」
「重蔵さん、な。あぁ、知ってる。本当にいい人だった。学校の帰り道にベーカリーがあってな。俺は親が忙しくしていたから食事はいつも一人だったが、そんな俺を気にして店の前を通るたびに、『食っていけ。一人で食うのはうまくないだろ』ってお節介やいてきた。学生も多くて騒がしい店だったが、そこにいるのは嫌いではなかった」

 お節介な祖父は、それからも柑士さんと店先でよく話し、柑士さんが家業を継ぐことを悩んでいたときも彼の背中を押したようだ。
 
「その恩返しに、この縁談をもちかけてうちを助けてくれようとしたってことですか?」
「そんないい話じゃないさ。俺はそこまで人のためにと思うようなできた人間じゃない」

 そう言って柑士さんは苦笑する。

「確かに、俺は重蔵さんに助けられたし、実際、NYに行くときも『いざとなったらうちの孫を頼むぞ』とは言われた」
「おじいちゃん……。柑士さん、そんなこと言われても困りましたよね」

 私は心配性な祖父の顔を思い出し苦笑する。
 いくら心配性でも、ただの客の一人に、しかも学生だった柑士さんにそんなことを頼んでいたのはなんだか気恥ずかしい。
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