初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 何となく言い方に影がある気がして彼の表情を見ようとしたが、身体ごと透の長い腕で抱き込まれてかなわなかった。

「……ね、週末のんびりしたいということは、今夜はゆっくりできるよね?」

 答える前に彼の唇が重ねられた。
 蕩けるような優し気な声に反してその動きは性急で、あっという間に唯花の口の中まで彼が入ってくる。

「あ……っ、折原く……」
「……このまま、されてて」
「……ん」

 戸惑ったのは一瞬。唯花はすぐに体の力を抜いた。透は深いキスを続けたまま唯花のパジャマのボタンを上から一つずつ器用に外し、身体に手を沿わせていく。

 交際を始めてから4か月弱、初めて肌を合わせてから何度彼に抱かれたことだろう。

 こういうときの透は会社で見せる柔和な雰囲気も、唯花に見せるかわいらしい表情もない。劣情を含んだ男の目で唯花を食べつくそうとする獣になる。

 そして唯花もこの時だけは余計な事は考えないでいられた。

「う……ん、はぁ……」
「は……唯花さん、かわい……」
「あっ……」

(かわいくなんて、ないのに……)

 掠れた声を零しつつ彼の唇が唯花の身体のいたる所を這っていくから、否定の言葉が出せない。
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