初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます

 翌朝、唯花はベッドの中で目を覚ました。身じろぎすると体に鈍い痛みが走る。

(うっ……腰やらなんやらが痛い……)

 昨夜はいつもに増して激しく彼に求められた。
 これは筋肉痛になるに違いない。少しは体力差も考慮してほしい。
 怖くて見れないが、きっと胸元には彼の残した跡がいくつも残っているだろう。

(いったい、どこのなにでスイッチ入れちゃったのかなぁ)

 当人は唯花を抱きこむようにしてスヤスヤと眠っている。
 至近距離で見てもシミなど見当たらない滑らかな肌、ふせられた長い睫毛、その寝顔は王子さまを通り越して天使にすら見える。

(ズルいわー男性なのにこんなに綺麗なんて。少しはその美貌と体力を分けたまえ)

 彼の耳元には至近距離で見ないと分からない程度にピアスの跡が残っている。
 昔の彼を思い出し、唯花は頬を緩めた。

(本当にずいぶん変わったなぁ。あの時は綺麗な狼みたいな子だったのに)

 出会いも再会も偶然だった。本来なら知り合うことすらなかったような年下の彼。
 
 だからこそ唯花は、いつまでも彼と一緒にいられないことを理解していた。
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