初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 頭を冷やした透に今夜告げられるのは別れなのだろう。

 予定通り笑顔で終わらせよう。大人ぶってこの恋にのめり込まないようにブレーキをかけていた自分に彼の前で泣く資格はないのだ。

「週末、落ち込むと思うけど仕事には影響させないから」

 力なく笑うと島津は複雑な表情で小声になる。

「いや、社長の息子っていうのは置いといて、婚約の話ってホントなのかな。あの時の俺を見るアイツの目つき、威嚇するドーベルマンみたいだったのに……」
 なにやらゴニョゴニョと言っているが、この優しい同期は自分を慰めようとしてくれているのだろう。
 申し訳なくて唯花は話題を変える。

「ありがとね……で、用件は? エラーの件? 一昨日から出てなかったよね」
「そうそう。必死で調査したらいろいろわかって。それがさ…………え、デジャブ?」
 
 急に素っ頓狂な声を出す島津の視線の先には――透がいた。

「折原君!?」

「唯花さん、俺と一緒に来て欲しい」
 透は大きなストライドでやってきて唯花の前に立つと低い声で告げた。

(帰ってくるのは夕方だったはずなのに……)
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