怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「まだ泳ぐ? 腹減ってないか?」

「プールはもう満足したかな。束縒、ありがとね」


 俺たちは着替えてレストランへ移動し、名物のステーキに舌鼓を打った。
 冬璃はなんでもうまそうに食べる。
 食材の質には多少こだわりがあるようだが、久米さんが作る料理が大好きだと言うだけあって、味の好みはけっこう庶民的だ。
 実はそういうところにも惚れていたりする。


 部屋に戻ってシャワーを浴び、ワインをたしなもうとしたものの、その前にノートパソコンを開いてメールのチェックをすることにした。
 諸角からの報告メールがほとんどで、それらにざっと目を通して返信の文章を書きこむ。
 冬璃はといえば、海に面した窓のそばで、ボーッと外を眺めていた。


「あんなに綺麗な夕焼けだったのに、お天気があやしくなってきたよ?」


 そんなふうに声をかけられても、彼女がなにを心配しているのか俺はすぐにピンとこなかった。
 なんとなくテンションが低いのは星空が見られなかったからだろうと、安直に考えていたのだ。

 しばらくすると雨が降ってきた。
 スマホで確認したところ、今から本降りになるようだが、夜中にはやむ予報になっている。
 明日の帰りのフライトに影響が出ないといいけれど。

 俺がパソコンを閉じたタイミングで、窓の外がピカッと光った。
 その瞬間、冬璃が「わっ!」と小さく声を上げてベッドへ飛び乗るのが見えて。
 ああ、なるほどと俺はようやく気がついた。

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