怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「束縒はさ、人に頼らなさすぎなんだよ。全部自分で背負っちゃうでしょ。……私の分まで」

「たしかになにもかも抱え込むのは俺の悪いクセだな。でも今は冬璃がいる。本当にダメなときは助けてもらうつもり。そう考えたら……結婚っていいものだよな」


 互いに支え合い、寄り添って生きていく。
 それが理想の夫婦のあり方だと私も思う。

 偽りから始まった私たちだけれど、束縒は私とそういう関係を築きたいと考えているのだろうか。


「私、ちょっとコンビニに行ってくるね。なにか欲しい物ある?」

「行かなくていい」

「どうして?」


 私の手首を掴んで離そうとしない束縒を不思議に思い、彼が言葉を発するのを待ちつつ表情をうかがう。


「夜遅いから危ない」

「大丈夫なのに」

「俺のそばにいろよ」


 最近、わかったことがある。
 こんなふうに彼に触れられると、自動的に心臓がドキドキしてくるのだ。
 それがたとえ、手首であったとしても。

 私が観念してゆっくりとうなずけば、束縒はベッドに肘をついて上半身を少しだけ起こした。

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