夜が明けたら君に幸せを。
「どうしたの?なんか静かだけど、昨日眠れなかった?」


「え、あー…うんそう。楽しみで」



本当に昨日は眠れなかった。


告白が緊張するのもそうだったけど、友達のいる修学旅行が楽しみで全然眠れなかった。



…それに、今日はちょうど9月20日。私が命を絶とうとした日だったから。


お願いだから何も起きませんように。私はもうこの世界で生きていきたいから。



「明日香、ちょっとだけ俺の話聞いてくれない?」


「…え?」



窓の外を見ていた朝陽が私を見てなぜか少し悲しそうに微笑んだ。



「俺、今まで何度も明日香に救ってもらった。俺が今ここにいるのも明日香のおかげなんだよ。本当に、明日香と出会えてよかった」


「え、な、なに急に…。そんなの私のセリフだし…」



突然、ぐいっと朝陽に抱き寄せられ視界が真っ暗になった。



「あ、朝陽…?」


「初めて会った時から、俺は明日香のことが忘れられなかった。明日香、好きだよ。…だから、生きて」



え、と考えるよりも先に、ガッシャーン!というものすごい音と共に車体がぐわんと揺れた。


あちこちから悲鳴が聞こえて、何かを引き裂くような不快な音や窓ガラスが割れるような音まで聞こえて、何事かと顔を上げようとするけど朝陽がぐっと頭を押さえているからできない。



なに…?何が起きているの…?


朝陽…っ。



その時だった。何も当たっていないはずのになぜかずきんっと頭が痛み、急激な眠気に襲われた。


なんなの、これ…。



途切れゆく意識の中で最後に見えたのは、朝陽の優しい笑顔だった…。
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