3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
『離婚前提の交際0日婚』
 結婚を意識するようになってから、密かに彼と結婚式を挙げたいと思っていた式場がある。

 都内の一等地にあり、結婚式場はもちろん、プールやエステサロン、レストランやブランドショップなど様々な施設が充実している世界的にも有名なホテルだ。

 ここで結婚式を挙げたカップルは永遠に結ばれるという話を聞いて、なおさら絶対に結婚式を挙げたいと思っていた。それなのに……。

全体的に落ち着いた内装の店内は、窓から見える夜景を邪魔しないように最低限の灯りしか灯っていない。おかげで窓側の特等席からは綺麗な景色を拝むことができていた。
シックな色使いの椅子に座り、次々と運ばれてくるフランス料理のフルコース。

「美味しい……」

 店の中央にあるグランドピアノが奏でるクラシックの音楽にかき消される私の声。

 チラッと周囲を見渡せば、カップルだらけ。ひとりで食事をしているのは私くらいだ。
 私、泉(いずみ)野々花(ののか)は二十歳から付き合い始めて六年になる恋人がいた。……そう、つい三日前まで〝いた〟なのだ。

 同棲を始めるために半年かけてふたりで住むマンションを見つけ、家具なども揃えていた。同棲前に両家に挨拶に行って来月からはふたりでの新生活が始めると信じて疑わなかったのに……。

 三日前のことを思い出したら泣きそうになり、肉のメイン料理の牛ヒレ肉のロッシーニ風を口に運ぶ。
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