3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 野々花はさらに頬を真っ赤にさせ、思いっきり俺の胸を押すと、そのまま逃げるようにリビングから出ていった。

 少しして寝室のドアが閉まる音が聞こえ、俺は頭を抱えた。

「なにやってるんだ、俺」

 天音のこともあるというのに、気持ちも伝えずに勝手に嫉妬して、あんなことをするなんて最低じゃないか。ただ、野々花に危機感を持ってほしかっただけなのに、自分を抑さえることができなかった。

 許してくれないかもしれないが明日、謝ろう。そして野々花にどう思われようが、自分の気持ちをちゃんと伝えるんだ。

 しかし次の日の朝、野々花はしばらく家を留守にするという置き手紙を残して、すでに家を出た後だった。
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