3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 理人さんが渡部さんの指導医になったようで、一緒に診察したり回診したりしているそう。その際、必要以上に距離が近くて怪しい雰囲気だという。

 誰に聞くわけでもなく、周りで話しているのが嫌でも耳に入ってくる。
 こんなことならコンビニでご飯を買ってきて、昨日のように中庭で食べればよかった。

 食堂で注文したうどんを啜りながら、外来患者が多く、会計処理が長引いている奈津希が早く来てくれることを祈ってしまう。
 私は今日、入退院窓口だったから会えていないけれど、きっともう奈津希の耳にも噂は届いているはず。

 きっと奈津希のことだから、すごく心配しているよね。鈴木君だってそうだ。昨日もあんなに心配してくれた。
 それなのに私はふたりにずっと嘘をついている。理人さんと離婚した後もこの嘘を突き通す覚悟でいたけれど、それが私にはできるのだろうか。

 ひとりで抱えるにはキャパオーバーな気がする。できることなら、奈津希と鈴木君に相談したい。ふたりの意見を聞きたいよ。

 いつの間にか箸を持つ手が止まる。その間も周囲から視線を感じ、私や理人さん、渡部さんの名前が聞こえてくる。
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