3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 理人さんが忙しい人だとはわかっていたことだけれど、まさか結婚して一カ月が経つというのに、家に帰ってきたのは荷物を取りにきた数回のみ。
 それも滞在時間、わずか一時間だ。その一時間でシャワーを浴びただけ。
 おかげでこの広いマンションにひとりで生活させてもらっている。

 部屋の間取りは3LDK。寝室は私がひとりで使わせてもらっていて、彼は書斎で寝ることになっていた。

 他にもう一部屋客室があるが、万が一に家族が家に遊びに来た時に備えて、ふたりで眠っているように見せるため寝室はダブルベッドにしたけれど、こんなにも理人さんが家に帰ってこないなら、下手なカモフラージュは必要なかったのではないだろうか。

 新婚旅行に関しては、半年先まで彼のオペの予約が入っているからお預けとなっている。おかげで私は契約とはいえ、本当に結婚したとは思えない生活を送らせてもらっていた。ただ、質素なひとり暮らしが豪華な暮らしに変わったくらいだ。

「だけど、こんな生活を三年間続けるだけでいいなら、本望かもしれない」

 祖母直伝の紅ショウガと白だし入りの厚焼き玉子を作りながら、これまでの生活を思い出す。
< 58 / 255 >

この作品をシェア

pagetop