夢物語

こんなに小さな男の子が告げる、死にたいという言葉の衝撃がとても大きくて、どう考えても似つかわしく無いその言葉が胸を深く抉った。どうにかしたいと焦る。

知らない子。もしかしたらお化けかもしれないし、そもそも夢の中の存在である。だけど、消えてしまった猫さんの他にこの子まで失う訳にはいかないと、自然と心が寄り添っていく。この子はきっと、私と猫さんの大切な男の子。


「死なないで欲しい。猫さんが居なくなって寂しいなら、私が傍に居るよ」

「そういう事じゃない」

「そういう事じゃないなら、どういう事か教えて欲しい」

「どういう事かも分からない」

「じゃあ一緒に考えよう」


腕の中の男の子が、小さく動いたのが分かった。

失いたくない。守ってあげたい。だってきっと、この子も私の物語の、大事な相棒なのだから。


「一緒に考えよう。君がなんで死にたくなったのか分からない。でも、死にたいくらい辛い気持ちなら私にもなんとなく分かる。一緒に探そう。一緒に前を向こう。そうしたら、また猫さんも帰ってくるかもしれない」

「……」

「一人じゃないよ、私が居る。私にも、君が居る。こんな場所でたった二人きりなんだから、私の為にも生きて欲しい。死んじゃう前に、二人で色々探していこうよ」

「……」

< 14 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop