夢物語

「にゃあ」

「!」


すると急に、鳴き声と共に足元に猫が現れた。艶やかな黒い毛並みに首輪についた鈴。この子はまさか、


「あの時の猫さん……!」


まさかの再会に感激して手を伸ばすと、するりと逃げられてしまった。ぎゅってしたかったのに……一人ぼっちでこんな所に居るのは不安でたまらなかったから安心が欲しかったのに。でもこれで安心だ。猫さんが居てくれたらとても心強い。


「もしかして、あの時の約束通りにまた来てくれたの?」


次の夢で会おうと約束をしてから何日か経ち、丁度今回がその時だった。前回のほのぼの海のお散歩から、まさかの樹海で猛ダッシュである。幸福度の落差が激しい。


「嬉しいな、良かったよ。気付いたらこんな所に居て、どうすればいいのかさっぱり分からなくて……猫さんは何か知ってる?」

「……」

「あれ? 猫さん? もしかしてお喋り出来ない?」

「……」


無言である。ただ、ジッとこちらを金の瞳が見つめているだけで、何も話そうとはしてくれない。

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