S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす

 同い年の玲香は、私が去年フランス旅行へ行った時に二日目まで行動を共にしていたCAだ。

 今はフライトでニューヨークにいるらしく、『こっちで婚約祝い買っていこうと思うんだけど、なににしようか悩んでて』と電話をくれたのだ。

 彼女とは高校時代に友達伝いに知り合い、学校は違ったものの家が近かったおかげで今もこうして仲よくしている。

 玲香はスタイル抜群のエキゾチックな顔立ちをした美女で、数々のハイスペックな男性を落としてきた恋多き女性。私とは真逆の性格なのだが、あっけらかんとした彼女といるのは楽しいし、恋愛面でもいろいろと勉強になる。

 ストラスブールに行く決心がついたのも、旅行前にエツとのことで玲香からアドバイスをもらっていたおかげだ。


「あの時再会してなかったら今はないかもしれないし、玲香のおかげでもあるよ。その節はありがとうございました」
『ほ〜ら、ビズのやり方を覚えておいてよかったでしょう。奥手な花詠が本当に自分からするとはびっくりだったけど』
「……旅の恥は搔き捨てってやつです」


 当時のことを思い出すとなんだか気恥ずかしくて、ビールをぐいっと呷った。
< 218 / 245 >

この作品をシェア

pagetop