Anything for you
「どうしてです?」

「いや、だって…貴女ほどの人なら、やっぱり特定の相手だって居るでしょうし…」

そう言うと、やたら驚いたような表情をしている。

「やだ、居ませんよ!そんな人」

そう言って笑うけれど、僕はもはや女性の「彼氏なんて居ない」は、どこまで本当かわかったものではないと思うようになっていた。

もっとも、中原さんは“とにかく寄りかかる”で、麻木さんは“とことん世話を焼く”なので、正反対ではあるが。

僕は、自分が頼りないタイプだから、中原さんに頼られたことで、随分長いこと、あれを恋と勘違いをしていたのではないかという気さえする。

麻木さんの優しさが本物なのか、実は何か他意があるのか、そこまではまだ見極められない。

ただ、そのようにあれこれ考えてしまうのは、どんなに現金と言われようと、自分でも驚くほどの勢いで麻木さんに惹かれているせいだろう。
< 20 / 30 >

この作品をシェア

pagetop