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 ボタンを止めていなかった言い訳をしようとすれば、なにを勘違いしたのか、駿介はズボンのベルトを緩め始めた。
 セクハラを通り越して、強姦になりそうだ。

「なにって、おまえがタマを見たいって言うから、見せてやろうと思っただけだっつーの」

「見たいなんて言ってないし、セクハラですってばっ」

「なんでだよ」

 なんでだよ、はこっちの台詞だ。
 最近、気になってはいたのだが、どうにも千真のことを虐めすぎではないだろうか。

「――?」

 千真がわなわなと唇を震わせていると、駿介は突然目を細め、キョロキョロと部屋の中を見回し、ベッドからシーツを手繰り寄せると千真の身体に巻いた。

「大狼さん?」
「しっ」

 静かに、と口元の前で人差し指を立て、なにかを探すように部屋の中を歩き始める。
 壁を伝い、ちょうどテレビの影になっているところで足を止めた駿介は、なにを思ったのか、いきなりテレビ台を動かした。

 千真がギョッと目を剥くと、駿介は玄関に放置されたままの鞄を漁り、またテレビに近づくが、あいにく、駿介が壁となって、千真からはなにをしているのかわからない。
 呆然としたまま待っていると、駿介が大きなため息を吐きながら近づいてきた。

「おまえ、知ってたのか?」

「な、なにをですか?」

「あそこ。壁に穴が開いてる」

 言って、駿介が立てた親指を向けたのは、テレビの後ろ側の壁だった。不自然な絆創膏に笑いが出そうになるのも一瞬で、急に背筋が凍る。
 千真は、駿介に巻かれたシーツを、ギュッと握り締めた。

「し、らない……です」

 止まった涙が、また溢れてくる。
 壁に穴が開いていたなんて、そんなの、隣の部屋から千真の行動は丸見えだったということではないか。
 もしかして、さっきのカメラの音も。

 膝を抱えて泣き出せば、いつの間にか隣に来た駿介が抱き寄せてくれる。
 そういえば一体、なんの用事があったのだろう。

「なんで、旭さんの電話だったんですか?」

「あん?」

 疑問を口にした瞬間、駿介が機嫌を悪くしたのがわかった。あれ、と思ったが、千真は言葉を続ける。

「さっき電話くれたの、大狼さんですよね。あれ、旭さんの携帯からじゃなかったです?」

「なんで俺が旭の携帯でおまえに電話するんだよ。俺の携帯だっつーの」
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