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 自慢じゃないが、駿介も旭も、学生の頃から女の子に声をかけられることが多かった。旭はそれでも女の子が好きだったからそれなりに遊んだりもしたけれど、もともと女の子がそんなに好きではなかった駿介は、それでかなり女の子に苦手意識を持つようになった。

 そんな駿介が、自分のものだと見せつけるように千真にマーキングをしているのは、駿介の過去を知っている旭としては、いい傾向にあるのだと思えるのだ。もちろん、千真にはいい迷惑ではあるのだが。

「そ、そんなことより、どうして旭さんがここにいたんですか? ここって、駿介さんの家なんじゃあ?」

 無理矢理腕を振り払って、千真は話題を変えるように旭を向いた。旭は、え、と目を丸くして、駿介を見る。

「言ってないの?」

「忘れてた」

「いや、忘れないでしょ、普通」

 まったく、この男は。きっと面倒で言わなかっただけなんだろうな、と駿介の性格が判るだけに、段々と千真が哀れになってくる。

「ここね、俺と駿介の家なの。一緒に住んでるんだ、俺たち」

「え? ……えええぇぇぇっ!?」

「別に、隠してるわけじゃないんだけど、言いふらしてるわけでもないからね」

「……」

 千真はあんぐりと口を開けたあと、キッと駿介を睨んだ。

「い、一緒に住んでて、あんなことしようと思ってたんですか!?」

「一緒に住んでても、一緒にヤるわけじゃねーんだから、問題ねぇだろ」

「問題ありますよね!?」

 うん、それには激しく同意する。最近、よくこんな顔を見るなぁ、とわなわなと口を震わせる千真の顔を見て思った。

「俺も、いやだよ。隣の部屋から賀永さんの喘ぎ声が聞こえてくるの」

「!? あ、あえ……っ」

 口をパクパクとさせる千真は、まだ見たことがなかったなぁ、なんて旭が呑気なことを思ったのが判ったのか、千真は涙目になって、セクハラですっ、と大声で叫んだ。
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