変態御曹司の飼い猫はわたしです
3 飼い猫は見た?!

 飼い猫の朝は、煮干しをかじることから始まる……なんてことは、ない。

 まだ薄暗い午前六時、私は煮干しで出汁を取っている。これから、この出汁でお味噌汁を作るのだ。

 今日の朝食は、炊き立てご飯とさつまいもの味噌汁、鮭の塩焼きに出汁巻玉子ときゅうりとタコの酢の物。
 
 このお屋敷に、猫の『タマちゃん』として連れて来られて早三日。衣食住が保証された私は、のびのびと家事をして暮らしていた。

(こんなに恵まれてていいのかなぁ)

 未だに、何故『猫』扱いなのか理解出来ずにいる。家政婦扱いしないのは、気ままに暮らしていいということなんだろうか。

 私はこの家に来た日のことを思い返していた。


***
 

 思い出のフレンチレストランで食事をした翌日。ホテルから直接、この豪邸まで連れて来られた。

 高級住宅街にそびえ立つ御屋敷。白くて高いコンクリートで覆われた門を潜ると、大きな玄関が現れた。

 玄関ホールを抜けて奥へ進むと、広々としたリビングダイニングがあり、その大きな窓から中庭が眺められる。奥には立派なシステムキッチン。吹き抜けから見える二階には何部屋あるのか、ドアが沢山ある。

 一ノ瀬さんが一人で暮らすには大きすぎる家だし、もしかしてご家族とここで暮らしているのだろうか。
 奥様がいるとしたら、『猫』扱いとはいえ、女性を家に連れ込んだら良い気はしないんじゃ……。

「あ、あの、ここは……?」
「ここは、僕の実家。安心して、今は誰も住んでないよ」
「は、はぁ……」
「両親が住んでたんだけど、去年イタリアに移住しちゃって、空き家なんだ。思い出の詰まった実家だから売るのも気が引けて。今は時々ハウスキーパーさんに来てもらってる」

 つまり、この家のハウスキーパーをせよ、ということだろうか。富裕層の間では、ハウスキーパーを『猫』と呼ぶのかも──

「戸建だからペット可だよ」

(や、やっぱりペット扱い!)

「タマちゃんには、この家で、ゆったり暮らしてほしいんだ。衣食住、全て僕が面倒を見るから、僕の猫ちゃんとしてここに住んでほしい」

 つまり、家も職も失った私を拾ってくれるということだろうか。ペットとして。
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