一途な黒川君に囚われてしまいました
恋は待ってばかりではいられない
黒川君と私の噂は、翌日には一気に社内に広まった。

目立つ場所で堂々とした様子で手を繋いでいたのだから当然だ。

そのせいで、誰かと会うたびに「やっぱり付き合ってたんだ」と、勝手に恋人同士と認定されてしまい、困惑の一日を送ることになった。


「黒川と付き合い始めたんだって?」

仕事中であるのに、柏木君もわざわざ私のデスクへ来ては尋ねてきた。

「始めてない」

首を横に振っては、今日何度目かわからないくらいの否定をする。

周囲からは信じられずに、照れていると勘違いをされるだけだが、事実なのでそう答えるしかない。

なずなだけは黒川君との間に何かあるということを察し、近く食事の約束をしている。

遅いけれども、彼女にはすべてを話すことになるだろう。

同居しているなんて伝えたら驚くに違いない。

それより前に兄妹になったことに対し、衝撃を与えてしまうだろう。

「今井さんって付き合ってもない男と手を繋ぐんだ?」

昨夜のことを思い出し、頬がカッと熱くなる。

彼に何があったのかわからないけれど、電車に乗るまで手を離してくれなくて困った。
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