【短編版】誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる
「あ、ありがとうございます。助けていただいて」
「いや、びっくりした。あそこは獣も出るから無事でよかった」

(獣……?)

 自分が獣に食べられる様子を想像して、頭をふるふるとさせる。

「起き上がれる? 俺は二コラ。この一体を守る騎士をしている」
「騎士?」

(騎士って確か国民を守る優しい方よね?)

「食べられそうならこのスープを飲んでごらん」
「もらっていいのですか?」
「ん? もちろん、行き倒れている人からお金は取らないよ」

 その言葉に安心してスプーンでひとすくいして飲む。

「美味しい」
「よかった、これくらいしか作れなくてごめんね」
「そんなっ! 十分ありがたいです」

 二コラはリーズがしゃべれることを確認すると、真剣な顔で彼女に問う。

「一つ教えてくれるかい? なぜあの場所にいたんだ? 君のその服から見るにどこかのご令嬢ではないのか?」
「あ……」
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