ハイスペ・栄枝社長は妻を囲いたい
「おい、どうした?
━━━━━━おっ!つか、この子可愛い~!」
そこに他の男が寄ってきて、妃波を見て目を輝かせる。

「やめとけ!こいつ、なんかヤバい……」
「は?
いいじゃん!
ねぇ、俺達と遊ばなーい?」

「え?い、嫌です…」
首を振り、聖守の背中に隠れ抱きつく。
そして顔を埋めた。

「えーー!奢るから、何か食べ━━━━━━うがっ!!?」
「お、おい!!」

一瞬で、聖守が男の胸ぐらを持ち上げていた。
様子がおかしくて、妃波がチラッと見る。

「え……ひじ、り?」

「ダメだよ。
僕の姉様に触れるなんて。
姉様が汚れるでしょ?」

口調、声色、表情はいつもと同じなのに、聖守を包む雰囲気だけが凄まじく恐ろしい。

妃波は、思わず聖守から離れ後ずさった。


こんなの、聖守じゃない━━━━━!!!


「頼…む、離し…てくれ…」
「いい?
もう、触らないで」
「わかっ…た」
聖守が胸ぐらを離しドサッと男が地面に落ち、えずいた。

「姉様!
………姉…様…?」

「聖守…だよ…ね…?」

微笑んでいた聖守の瞳が、切なく揺れている。
「姉様、僕を嫌いにならないで……」

「聖守…」
(怖い……!!)

でも………

“突き放してはダメ”
不安で壊れそうな彼を今突き放したら、壊れてしまう。
大切な彼に、そんなことできない。

身体が震える。
でも早く、聖守を安心させたい。

妃波はゆっくり、聖守に近づき抱きついた。
そして聖守を見上げ、微笑んで言った。
「大丈夫だよ!
私は、聖守が大好きだよ!」

「ほん…と、ですか……?」
「うん!大好き!」

「良かっ…た……!
僕も、姉様が大好きです!」
聖守も抱き締め返し、嬉しそうに言った。

聖守の腕の中で、聖守が“嫌いにならないで”と言っていたことを思い出していた。

やっと、聖守の言っていた意味がわかった気がした。

「聖守」
「はい」

「嫌いにならないよ、私」

「え?」

「ううん、違うな……
嫌いになれないの。
聖守のこと、大好きだから」

「はい!僕も、姉様を嫌いになれない!
大好きです!」
二人が微笑み合っていると、また違う男がやって来た。

周りにいた男達が、一斉に綺麗に整列した。

「「「お疲れ様ですっ!!」」」

「ご苦労さん!
……………って、あれ~?
聖守と妃波嬢だぁー!」

そこには、瑛鉄が立っていた。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop