大嫌いの先にあるもの【番外編】
「春音ちゃんのお姉さんのイケメンの元旦那さんですか?」

イケメンの元旦那って……僕の事か?
春音はそんな風に話しているのか。

「多分」
曖昧に笑うと、滝本さんがなぜかうっとりしたような表情を浮かべる。

「……カッコイイ」
「えっ」
「な、なんでもないです。前に会員証を作りに来られましたよね」
「ええ。まだ会員証って使えますか?」
「もちろんです。一度作ればお店が潰れない限りは永久に使えます!」
滝本さんが、誇らし気に胸を叩いた。
「そうなんですか。じゃあ今日は何か借りて行こうかな」
「どうぞ、どうぞ。見て行って下さい」
「あの、その前に春音がどこにいるか知っていますか?」
「春音ちゃんでしたら、今店長と面接中で、事務所にいます」
「面接って、何か問題でも起こしたんですか?まさか客とトラブルになったとか?」
滝本さんがクスっと笑った。

「何か僕、おかしな事を言いましたか?」
「いえ、なんか一生懸命に心配なさるなと思って。春音ちゃんが言っていた通りですね」
滝本さんが意味あり気にこっちを見た。

「春音ちゃん、あなたの事、物凄く心配症な人だって言っていました」

いつも春音から言われている言葉だ。
もしかして春音は僕に心配される事が鬱陶しいのか?
こうしてバイト先で愚痴をこぼすほどに。

「春音ちゃん、あなたの事、大好きみたいですよ」
「えっ」
滝本さんがうふっと笑った。
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