婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「うーん、ここは立地がいいけど、治安が不安ね」
「そうなんですか? でも立地がいいならここにしませんか?」
「そうねえ……」

 私ひとりならこのメゾネットタイプで問題ないのだが、フィオナのことがあるから悩む。こちらの物件は、近くに昔私が人攫いに捕まった廃ホテルがある。つまり柄のよくない奴らと出くわす可能性が高い。

 今回は解呪の魔女としてというより、薬屋として独立しようと考えていた。これはフィオナのためでもあった。
 フィオナは母の姿を元に戻したいと、密かに願っていたのだ。それもあって魔女になることを考えていたと、ふたりの時に聞いた。かわいい愛弟子の希望だから、なんとかしてやりたかった。

「まあ、ここが一番いいものね。皇城から近いのもポイント高いわよね」

 フィオナが影移動できると言っても、まだ長距離の移動は難しい。薬草の仕入れもそうだけど、なにより母親とすぐに会える環境の方がメリットは大きいだろう。


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