極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
「暑いだろうだから、負担にならない素材がいいね。それでいて軽いものがいい」

 店員を伴ってアドバイスを受けつつ、翔がさらりと言った。

 果歩も同意であったので頷く。

「そ、そうだね。あちこち動くもんね、多分」

 そう、式は暑い場所……ハワイで挙げる予定になっていた。

 翔から「ハワイ挙式がいい」と聞いたときには、流石に驚いた。

 けれど理由なんて言われなくてもわかった。

 二人が初めて出会った場所。

 惹かれ合った場所。

 そして航を授かった場所でもある。

 そこで結婚式を挙げられるなら、一生の愛を誓えるなら、これ以上ふさわしい場所はないくらいだ。

 ただ、ハワイで式をするとなると、色々支度が大変だ。

 向かう手配もそうだし、会場や式の段取り。

 招く身内や友人、知人だって都合があるだろう。

 翔がだいぶ先の「夏か秋」と提示した理由を、果歩はやっと理解した。

 準備は山のようにあるし、ひとつひとつだって気を入れてしないといけないだろう。

 そうであれば、仕事をしながら進めるよりも、専念したほうがいい。

 たくさんある準備は、楽しいことばかりではないかもしれない。

 事務的なことや、手間がかかることも多いだろう。

 でもきっと負担になんて思わないだろうな、という確信があった。

 だってとても素晴らしいひとときのためなのだから。
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