極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
「え、……、あっ、ええと、日曜日まで……日本の時間だと仕事は明後日から、かな?」

 数秒考えてしまったが、すぐにあたふたと返事をした。

 どうしてこんなことを聞かれたのかわからないけれど、とりあえず考えて返事をした。

「そうか」

 翔の声は少し硬くなった。

 そしてこの質問の答えを、果歩は数秒後にはっきり知ることになる。

「じゃあ、明日まで一緒にいないか?」

 果歩は目を見開いた。

 まさか、こんな提案だとは思わなかった。

 かっと胸が熱くなってくる。

 すぐに頬までのぼってきた。

 だって、『明日まで一緒に』。

 それの意味するところなんて、ひとつしかないのだから。

 胸がばくばくするのが再び起こったし、今度はもっと強く感じられた。

「で、……でも、飛行機とか……」

 嬉しいと思ったし、そうできたらいいとも思ったし、本当はすぐに頷きたかったけれど、もう飛行機は予約してしまっている。

 それに明日までハワイに滞在したら、日本に帰って仕事に行くまでの時間がかなり少なくなってしまう。

 移動の疲れも取れないかもしれない。

 と、思ったものの、そちらはあまり重要ではないか、とすぐ思った。

 だって、翔ともう少しいられるのだ。

 しかも向こうから誘ってもらっているのだ。

 翔とここで別れたら、次に会う機会なんて、いつになるかわからないし、そもそも機会があるのかすらわからない。

 スマホの連絡先だって交換していないのに。

「キャンセル代も、改めてのチケット代も、俺が出す。果歩さえ良ければ」

 果歩の心が揺れているのを悟ったように、翔は、きゅっと、もっと手をしっかり握ってくる。

 さらに名前だけで呼ばれて、果歩の胸が、どきんっと高鳴った。

 こんなふうに言われたら、あと問題なのは帰ってからのことしかない……いや、違う。

 一番心を決めるべきなのは、『翔とこれからに続くかもしれない時間を過ごすこと』だ。
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