太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

寝室で部屋着から下着まで全て脱ぎ、いそいそと手渡されたシャツに袖を通す。

わぁ諒のシャツだぁ…
ふふっ、やっぱりおっきいなぁ。
羽織ると諒に包まれてるみたい…なぁんて。

あ!クローゼットの内側に鏡があったよね。
どんな感じかなぁ?


……ん?

んんん?

ああぁ、なんだこれは…

もう少しシャツワンピちっくな感じを想像してたのに…

思ってたんと違うー!



………

「あのー…諒?…着替えたんだけどね…これはこれで恥ずかしいというか…その…」


〝シャツに袖を通しただけで、ボタンはとめずにオープン〞

ていう、この格好がこんなにも破廉恥なものだったとは!


リビングのドアからそっと顔と手だけ覗かせて「だからいくつかボタンを留めてもいいかな…」と言おうとしたら、諒に手を捕まれてリビングに引き込まれた。


「あっ…」

はっ…恥ずかしい!

諒を見れなくて俯いてしまう。
きっと諒はニヤニヤしてるんだろうな…

そう思ったのに…

チラっと窺い見ると、諒は赤い顔して固まってた。


「諒?」

「ッ!…あ、ごめん…意識飛んでた」

「ふふっ、何それ」

「麻依の破壊的な悩殺にやられてた」

「破壊的な悩殺!?」

「はー…俺…大丈夫かな…頑張って描くよ…」

「え?あ、うん」

ていうか、やっぱりこの格好のままなんだね…



「えっと、モデルなんて初めてで、どうしたらいいのか全然わからないんだけど…」

「そうだなー、ソファの背を少し倒そうかな。そこに寄り掛かる感じとか…いくつかやってみて、麻依が辛くない姿勢がいいよね」


諒のおうちのソファはフルフラットにできて簡易ベッドにもなるそうで、背もたれ部を良さそうな角度に調整してくれてる。


「…諒って、今までも描いたことあるの?…その…裸の女性…」

「え?ないよ。何で?」

「…慣れてるみたいだから…」


すると諒は手を止めて、私を優しい目で見てくれた。

「俺、まだ誰もモデルにして描いたことないんだ、裸でなくても。元々人物画には興味がなかったからね。でも麻依の裸を見た時から、麻依の綺麗な身体をすごく描いてみたくなってさ…描くならどんなアングルでどんなポーズがいいかな…とかすごーく考えてたから、今すんなり言えてるワケ。俺、絵は趣味で描いてるだけのド素人だし、美大出身なわけでも、描き慣れてるわけでもないからね」

って照れながらバラしてくれる諒を愛しく思う。

「そうなんだ。てっきり何人も描いてて慣れてるのかと思っちゃった」

「そうだったら妬ける?」

「うん…妬くことじゃないのはわかってるけど…妬いちゃうかも」

「いいんだよ、妬いても。どんな小さなことでも言って?俺、妬いてもらったら嬉しいから」

「ん…なんか言いづらいけど努力する」

「あっ!マイマイがいんじゃない?マイマイの時みたいに芝居じみてたら麻依も言いやすいんじゃない?」

「…そうかも…それなら言いやすいかもね。って妬く度にマイマイが出てくるの!?それはそれで恥ずかしくない!?」

「あははは、俺はマイマイの言い方も好きだけどな」

「ほんと?…じゃあ嫉妬する時だけじゃなくて何か言いづらいことがある時はマイマイになろうかな」

「そうして?それなら俺もわかりやすいし、可愛くて好きだし。…あ、可愛すぎてどこでもキスしちゃったらごめんね?」

「だっダメだよ、人前は」

「ははは、ほんと麻依はからかいがいがあるな」


…ムゥ…笑われた…

「もうっ、諒なんかプンだ。あっこれは違うか」
福田くんだったね。

えっとマイマイは確か…

「もうっ、りょおたんのイジワルっ!もぉ知らないんだからっ」

ぷいってそっぽ向いたら、後ろからそっと抱きしめられた。

そして、耳元で息がかかるように…

「…バーカ、マイマイが可愛いのが悪いんだろ?俺がイジワルになるのは可愛すぎるマイマイのせいだからな?」

…なんて低めのいい声で囁くものだからドキドキしてしまう。


ハッ!
あわわわ、りょおたんキャラ強し!
マイマイ負けちゃう!

「違うもんッ!りょおたんが悪いんだもん!…でもイジワルなりょおたんもドキドキして…好き…」

自分の着てるシャツの裾をクイと引っ張りながら、顔を背けつつ、モジモジと斜め下を向いた。

すると、私を抱きしめてた腕がぎゅ…と強くなり、諒の頭が肩にのし掛かった。

「はあぁ~…ダメだ、勝てねぇ…マイマイが小悪魔で可愛すぎる…」

「だって、りょおたん強いから…」

「つか、なにこれ、対戦だっけ?」

「…いや…あれ?なんで対戦?」

「ハハッ楽しいな、麻依とこうやってんの。…年取ってもずっとこうしてバカみたいなことしてたいな」

「ふふっ、そうだね。…あっそういえば絵を描くんだったよね」

「ん、じゃあこっち来て座ってみて」

と、大きめのブランケットを敷いたソファに促された。


何パターンか座り方を変えたりして漸くポーズが決まった。

とても楽な姿勢だし疲れなさそうなんだけど、自分としてはだらしない格好ではないかと思う。
諒から見るときれいに見えるらしいけど。

最後に諒がシャツの位置を手直ししてポーズ設定完了。

…胸から何から全面がオープンにされてシャツを着た意味があるのかないのかわかりませんが…

でも諒は真面目に描きたいみたいだから、私も変な気持ちにならないようにモデルを務めなきゃね。
ガンバろ!
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