太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
披露宴会場の扉が開き、挙式の時と同様に一礼すると、先導スタッフの後に続いた。

やはりドレスが変わったことにみんな驚いてくれている。
ふふっ、全然サプライズじゃないけど、みんなの反応が嬉しくて楽しい。
それに似合ってるって言ってもらえてよかったぁ。


「麻依先輩、綺麗ですうぅ…あぁぁ」

ひよりんが泣きながら褒めてくれる隣で、翔琉くんがひよりんをよしよししながら「マジで綺麗っスよ。諒さんとすげぇお似合いっス」って言ってくれた。

そしてなぜか福田くんも泣いてる…

「麻依ぴょん…綺麗だぁ…諒きゅんとお似合いだぞぉ…」
ってハンカチ片手に言われて、諒と笑っちゃった。


そんな感じで皆さんからそれぞれ声をかけてもらい、私達も席に着いた。


披露宴の司会も修さんがしてくれている。
気心が知れた方にしてもらうのはとても心強いんだね。

修さんから紹介された森田社長とライト建設の富山さんが祝辞を下さり、その後、乾杯と共にパーティー開始。
すると、一斉にドリンクや料理が運ばれてきた。

うーん、どれも美味しそう!

でも全部食べたらお腹が出ちゃうかな?マーメイドだから隠せないし…
って諒に言ったら「大丈夫!気になるなら後ろから抱きしめて俺の手で隠すから」って言ってくれたけど、その方が恥ずかしくない…?

んー…でも…やっぱり食べる!
そんな私を、諒が優しく見てくれる。ふふっ、幸せだなぁ。


料理の提供が少し落ち着いた頃に壁に大きなモニターが現れると、司会の修さんがマイクを握った。

「ご飲食の途中ではありますが、今日この場にお越しになれなかった方々とオンラインで繋がっておりますので、ご紹介いたします。まずは、諒くんのお母様と麻依さんのお父様です」

すると、モニターにパッと諒のお母さんの秋絵さんと、私のお父さんが映し出された。

『皆さん、はじめまして。諒の母の佐伯秋絵です。麻依ちゃん、諒、結婚おめでとう!さっきの挙式も見せてもらってたわよ~。麻依ちゃん、すごく素敵だったわ~!今のドレスもすごく似合ってて、うっとりしちゃうわぁ!諒、麻依ちゃんと仲良くね!』
秋絵さんが手を振ってニコニコ笑顔で話してくださった。

そしてその隣でお父さんが話し始めた。
『諒くん、麻依、結婚おめでとう!皆さん、はじめまして、麻依の父の羽倉義信です。諒くんと麻依がお世話になっております』

一旦言葉を切るお父さん。
そして、穏やかに言葉を続けた。

『なぜ麻依の父親が、諒くんの母親と一緒にいるのかと不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。…実は、秋絵は私の実の妹なんです。…となると、諒くんと麻依がイトコになるのでは?と思われますよね。ですが、諒くんと麻依は血縁関係は一切ございません。…ではこのカラクリは諒くんからお話しいたします。諒くん、よろしくな』

打ち合わせ通りに、お父さんが話してくれた。
そういえば、お父さんはまた羽倉姓に戻ったの。私達も事情がわかったし、もう中田でいる必要もないからって。

そして諒が立ち上がり、徐に話し出した。

「皆さん、お食事中に込み入った話をお聞かせしすみません。どうぞお食事を進めながら聞いていただければと。えー…これを知っている人はほとんどいないんですが、実は俺には母が2人います」

そしてゆっくりと友美さんの元へ。

「モニターで話してくれた佐伯秋絵さんは、俺を育ててくれた母で、俺を産んでくれたのがこちらの日野友美さん」

「諒…」
友美さんが驚いてる。

「俺は産まれてから5歳まで日野 諒として過ごしていました。ですが、母に俺を育てられない事情ができてしまい、母は泣く泣く俺を施設に預け、その後、縁あって育ててくれたのが佐伯の両親です」

会場がしん…と静まりかえった。
落ち着いたBGMが静かに流れる。

「ちなみに、日野の父と佐伯の父は俺が子どもの頃に他界しています。日野の父に関しては俺が小さい頃だったので俺は覚えていなくて、写真でしか知りません。この後流す俺達の自己紹介動画にも出てきますのでよかったら見てみて下さい」

一旦言葉を切る。

「…そして、佐伯の父が他界したのは俺が中学に上がる前でした。それからは母が一人で育ててくれましたが、俺が高校生の時に病気が見つかり、実の兄である麻依のお父さん…義信さんに頼るようになりました。今も療養中のため、今日はこっちに来られませんでした」

諒は言葉を切ると、私を見た。

「そして、義信さんが麻依の父親だと知ったのは、実は昨年の秋です」

諒が私にマイクを預けた。
私も自分の言葉で話し始める。

「皆さま、私達の内情をお聞かせしてすみません。お聞き苦しいこともあるかと思いますが、この事情をはっきりと申し上げておいた方が良いと判断し、お話しさせていただくことにしました」

一息入れて、話し始める。

「先ほど諒が言った通り、私も、父が秋絵さんのところにいると知ったのも同じ時です。私の両親は、私が大学に入ると同時に離婚しました。離婚して離れて暮らす方が、秋絵さんと諒に力を貸すのに便利だからと。しかし私はその事情を聞かされずに過ごしてきていたため、ずっと父とは連絡もとっていませんでしたし、私は父がどこで何をしているのか全く知りませんでした」

軽く息を吐いて、言葉を続ける。

「それが昨年の秋、偶然知ることになり、母から全ての真実を聞きました」

諒が優しい笑顔で「替わるよ」ってマイクを持ってくれた。

「…そんなワケで、俺達はそれぞれ親の関係を知らずに出逢い、惹かれて、恋をして、今日の日を迎えることができました」

会場を見渡して、フッと笑う諒。

「ね、すごいでしょ?麻依と俺の縁。だから誰も俺達の間には入れませんからね」

と、私を抱き寄せた。
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