太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

はぁ…今日もおつかれ、私。

お通夜の残業を終え、わが家(と言ってもマンションの1室だけど)で寛ぐ。

リビングのテーブルには鯛茶漬けとノンアルカクテル。

いただきます、と手を合わせて鯛茶漬けをすする。

「…あー、美味しい!」

たまに溶けきらないわさびの塊がツンとくるけど、それもまた一興。

サラサラッと食べ終わり、お茶碗をシンクへ運ぶ。

「んー…先に洗ってからゆっくり飲もっと」

フンフンと鼻歌混じりに洗い終わるとそそくさと部屋に戻り、缶のノンアルカクテルを開ける。


「あー、おいし!」

今日は柚子。
甘酸っぱくて香りがよい。


いつもなら見るあてもなくテレビをつけるけど、今日はこのままボーっと過ごしたい…と思いながら…

支配人の事が浮かんできてしまう。

最近…支配人の表情が柔らかくなってきたなぁ…

初めの頃はぎこちなかったのにね、ふふっ。

今ではソレイユのスタッフとも普通に笑って話せるようになってきたもんね。


これっていいことなのに…

さみしいって、何だろう…

やっぱり私、気持ちがお母さんなのかな…

いつも助けたくなるし…

練り切りを喜んでくれたのがすごい嬉しいし…

私のお気に入りのお店を紹介するのも…
一緒に行けたら嬉しいけど、それはやりすぎだよね、母といえども…

きっと支配人にとってはお母さんなんだろうな、私…

そして私は子離れできない母親…か


私は一体どこまで枯れるんだろ…

はぁ…

さっきまで甘酸っぱく感じていたのに柚子の酸味がやけに染みてきた…

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