太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
…これで今回の俺の全ミッションが終わったと思うと、急に疲労感が襲ってきた。

自分の席に戻ると羽倉さんが俺の分の料理を取り分けてくれていた。
見ると、食欲がない俺にも食べやすいものばかりだった。

羽倉さんは他のテーブルには行かず、俺と話してくれていた。

俺がいるから気を遣って居てくれているだけだと自分に言い聞かせながらも、この時間はとても心地よかった。

何で羽倉さんと話すとこんなに穏やかな気持ちになるんだろうな…

声も…聞いていて安心する…


楽しい雰囲気の中でのお酒や食事の時間はあっという間に過ぎ、解散となった。

俺が支社長と会計を終わらせると、大半の人達が二次会に行こうとしていた。

俺も誘ってもらったが、疲れがいつもの非ではなかったので今回はやむ無く断った。

〝できれば行きたかった〞なんて俺が思うなんて…
今まででは考えられないことだよな…

などと考えながらも、目は自然と羽倉さんを探していた。

二次会に行くグループには……いない。

そのグループから少し離れたところで松島さんと話していたが、松島さんは高見くんに促され二次会グループに混ざって行った。

それを羽倉さんは小さく手を振って見送っている。

その手が下りたのを見計らい声をかけた。


「羽倉さんは行かないんですか?二次会」
さりげなく聞いてみる。

後ろからの俺の声に驚いたようで、振り向いた顔が「えっ」って言ってる。

俺がいたの、気付かなかったんだ?

「あっ、はい。今日は疲れたので帰ろうと思って」
もう若くないから、なんて呟いて笑う。

…俺と一つしか変わらないんだよ?
あなたは充分若くて可愛いけど?

心の中では素の俺がいちいちうるさい。

…しかし、彼女のその言葉で自分の失態にはたと気付く。

「っ!…そうですよね、疲れてるのに急に幹事までさせてしまって…本当にすみません」

ほんと俺ってバカだな…今、言われて気付くとか…
前髪をくしゃりと掴んで上げる。

「あっ、違います、そういうんじゃないですからねっ、幹事は全然疲れないし、楽しんでやってますから。それに高見くんもいたし、ていうか、ほとんど高見くんが仕切ってくれたから私は何もしてないし」

焦っているのか珍しく饒舌だ。

ほんと、やさしーな。
美人で優しくて、たまにすげぇ可愛いくて。

「…羽倉さんもお酒、飲んでないですよね?車で帰るんですか?」

「えっと、今日はタクシーで帰ります。ここから車を取りに行くのも面倒なので」

「…それなら僕が送っていきますよ?」

「え?…いやいや、お疲れなのに申し訳ないですから…」

「あ…住所とか知られたくないですよね」
そっか、そりゃそうだよな…

「住所?……あぁ、それは全然なんですけど…本当にお疲れなのに悪いなって思って…」

「それはこっちも同じですから。羽倉さんの迷惑でなければ」
彼女の優しさにフッと気が緩む。

「えと…じゃあ無理でなければお願いします」
ペコリと頭を下げる羽倉さんが…やっぱ可愛い。

はぁ、俺なんかヘンだ。
いつも以上に、ずっと羽倉さんが可愛く見える。

< 33 / 268 >

この作品をシェア

pagetop