太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
社葬の3日後、ライト建設の社長と富山さんがご挨拶に見えたので、施行担当3名とフロント2名でお出迎えした。
社長と支社長は都合により欠席。

「いや、本当にお越しいただいた皆さんから『社葬なのにいいお式でした』と言ってもらえましてね…」
社長と富山さんは社葬とその後にあった事を嬉しそうに話して下さり、それを聞く私たちも笑顔だった。

そして最後に、富山さんがやや困った顔で話し始めた。

「…実は、前もってうちの社員には『恥ずかしい振る舞いはするな』と言っておいたんだが」

私達は「?」顔。

「…佐伯さんや羽倉さんをはじめ、上原さん、高見さん、松島さんと皆さん素敵な人ばかりだろう?だから、むやみに名刺を渡したりするなと言っておいたんだがね」

「はぁ…」

「そうしたら、じゃあ社葬が終わってからならいいか、という輩が出てきてね…」

「?…はぁ…」

「つまり…あなた方を気にいった独身の者が、あなた方に逢いたいと言っているんだが…」

「「「えっ!?」」」

みんな同様に驚く。

「あの、私達って…誰になんでしょうか…」

「いやぁ、ここにお集まり頂いた皆さん、それぞれにファンができたみたいでね…」

「ええぇ…」

「私もね『そんなに素敵な人達なら既に相手もいるだろう』と言ってはいるんだが、会うだけでもと言って聞かなくてなぁ。それで折を見てこちらに来るとまで言っておってね…。会社としてはそこまでダメだとも言えなくてねぇ…」
後ろ頭をワシワシとかく富山さん。

「………」

お互いに顔を見合わせる。

「うちの社員が迷惑をかけるかもしれないが、もし困る事があれば遠慮なく私に言ってくれて構わないからね」

最後にそう言って、社長と富山さんは帰っていった。



…誰のかわからないため息がいくつか聞こえた。

「そういえば…お式の最中もその前後も、秘書っぽい綺麗な方々が支配人と上原さんと高見さんをチラチラと見ていらっしゃいましたよね。あれは見惚れていたということですね…なるほどぉ」
人差し指を顎にあてたひよりんが口を開く。

「あ、そうだね、確かに。見てた見てた」
私も少しずつ思い出してきた。

「そうなんですか?全然気付かなかったけど…」

「えぇ、そりゃあもう恋する乙女でしたよ、皆さん」
ハハハと笑うとなぜかムッとする支配人。

「他人事みたいに言いますけど、そういう羽倉さんも男性の方々からそういう目で見られてましたよ。数珠を買いに来た人達、多かったでしょう?」

「あー…確かに珍しく数珠は多く売れましたね。でもそれが何か?」
と言うと、はぁ、とため息をつかれた。

「羽倉さんと松島さん目当てですよ、それ」

「あっ!そーそー、そんなこと言ってんのいた!フロントに美人がいるから話のきっかけに、っつって」

「はぁあ?たかがそんなきっかけ作るのにあんな高い買い物します?」

「それだけ魅力があるってことじゃないですか」

「さすが麻依先輩!モテモテですぅ、うふっ」

「松島ちゃん狙いも結構いたよ、1人はすごいガン見してたし」

「えぇ!?」

…なんか支配人と高見くんの顔がちょっと怖いんですけど。

「…まぁ来たら来たで対処しましょう。来ないかもしれないしね」
上原さんがまとめる。

「でも、皆さんはモテてるこの状況は嬉しくないの?俺は奥さんいるから困るだけだけど」

「そうっスね、若い頃ならまだしも、今はあんま嬉しくねぇかな」

「僕もですね」

「私も特に嬉しくは…」

「麻依先輩もですか?私もです…本当なら困ります」

「ふぅん…確か皆さんフリーでしたよね?…ってことは好きな人でもいるのかな?それとも…誰かがモテると困るのかな?」

珍しく上原さんが恋バナを振りニヤニヤしている。

「「「「 ! 」」」」

「おっ、いい反応だね」

「修さーん、今日はやたら攻めんスね」
高見くんが口をとんがらせて言う。

「ははっ、ゴメンゴメン、そんなつもりはなかったんたけど。あー、若いっていいなぁ」

「俺が〝若くない〞って言ったの、根に持ってるんスか!?」

「ハハハ、そんなんじゃないよ」

こんな感じでこの時は終わったのだが…
< 48 / 268 >

この作品をシェア

pagetop