太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

そうだ!海に行こう!/side諒

7月のとある暑い日。
館内でいきなり高見くんに海に誘われて、何事かと思ったら麻依さんと松島さんも一緒だと言う。

それは断る理由なんてないでしょ!
麻依さんと海!
何があろうと行かせてもらう!

しかしそんな気持ちを悟られないように、高見くんには努めて冷静に「えぇ、僕が行ってもよければ」と答えた。


それからは高見くんが計画を立ててくれて、当日は車2台、俺の車に麻依さんを、高見くんの車に松島さんを乗せて行く事になった。


そして、待ちに待った当日!
俺が麻依さんを迎えにマンションに行くと、既にエントランスの外で待っていてくれた。

麻依さんを見つけると、ドキン!と胸が高鳴った。

――緩くカールしている高めのツインテール。
いつもより明るいカラーの化粧。
優しい花柄のシャツワンピ。
ヒールのある白いサンダル――

職場で見るキリリとした美人の麻依さんもすげぇ素敵だけど、今日の麻依さんは綺麗なのに可愛すぎる…
これが大人可愛いってやつなのか!?

しかしそんな思いを駄々漏れにはできず、顔の緩みを最小限にして微笑む。

「お待たせしてすみません」

「いえ、私が早く出すぎちゃって。わざわざありがとうございます」

あぁ…明るい笑顔が眩しいです、麻依さん。

くぅ…俺の顔の筋肉よ、今日1日耐えきれるか!?



高見くん達とはコンビニで落ち合った。
俺の車から降りた麻依さんに「やーん、大人カワイイですぅ」と抱きついていた松島さん、激しく同意します。なんなら俺も抱きつきたいです。


4人で飲み物やおやつを買い、俺は高見くんと海の家までのルートを確認し、2台それぞれ海に向かう。

「どこかに寄るとか何かあれば、私とひよりんで連絡を取り合おうね」

「ハイッ、了解ですッ」

松島さんの元気な返事と敬礼ポーズにみんなが和んだ。



車に乗り込み、ナビと音楽の準備をする。
「俺のスマホに入ってる曲でもし好きなのとかあればかけていいですよ」

「スマホを勝手にいじるのもあれなので…っていうか支配人の好きなのを聴いてみたいです、ふふっ」

何それ、可愛すぎんだけど。
…にやけるな、俺、冷静に。

「すみません、それじゃ俺の好みで流しますね。もし嫌だったら言ってくださいね」

と、俺の好きなバンドのアルバムから選ぶことにした。

俺はインストやジャズ、フュージョンの昔のバンドが好きなんだけど、俺の世代で好きで聴いてるって人とまだ会ったことがない。

じゃあ…普段から聴いてるけど、ドライブによさそうなナンバーが揃ってるこのアルバムにしよう。
嫌だと言われないといいんだけど…


「あっ!これ私も好きです!アルバムも持ってますよ。ていうか支配人もお好きなんですね!」
本当にいい曲ばかりですよね、と笑いかけてくれる。


え…知ってんの?てか好きなの!?

「うわ!マジで!?周りでコレ知ってる人すらいなかったからすげぇ嬉しんだけど!……ってすみません…」

嬉しすぎてつい仕事バージョンの俺から素の俺になってしまった。
いい大人が恥ずかしい。
麻依さん、呆れてないだろうか…


「支配人て、普段はそういう感じなんですか?」

「えっ?」

「言葉遣いとか…そういえば一人称も〝俺〞なんですね。ふふ、なんか新鮮」

「あー…誰かと話す時は普段の通りですけど、独り言とか…あ、大学の男友達と話す時もこんな感じかな。それ以外の人に対して出したことはなかったんですけどね。あまり言葉遣い良くないかも…聞きづらかったらすいません」

「いえ、私はその普段の感じ、好きですよ?ふふっ」

ああぁ、だから麻依さん、そんな優しい笑顔でそんな事言われたらヤバいんだって…胸がバクバクいってるし…

俺の顔の筋肉に加えて俺の心臓、今日1日耐えられんのかな…

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