本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
『もう一度寝るから無理はしていない』と言って聞いてくれないのだ。

「おはよう」

「修平さん、おはようございます」

横髪が跳ねて顔にシーツの皺の跡がついているのが可愛らしく、真琴の胸がキュンと音を立てた。

「朝ご飯のお味噌汁は修平さんの好きなシジミにしました。沸騰させないように温めてくださいね」

「いつも温めないで飲んでいる。十分、美味しい」

「えっ」

(面倒くさい? 今度から保温容器に入れておこう)

なにげない会話ができるのが嬉しくて、花福の懐石メニューが昨日から秋のコースに変わったことや、いつもと違う理髪店で散髪したら角刈りにされてショックを受けていた兄のことまで、つい話し込む。

「仕事ができそうな板前風の髪形でいいと思うよとフォローしたんですけど、兄が――」

頷いて聞いてくれていた修平だったが、途中で「時間」と注意してくれた。

「あっ、そうですね。行ってきます」

次期経営者が遅刻してはいけないと慌てて背を向けようとしたら、手首を掴まれた。

「待って、忘れもの」

着替えやメイクポーチ、財布と携帯電話を入れた仕事用のショルダーバッグは持っており、忘れものに思いあたらず目を瞬かせた。
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