あたしを歌ってよ

電話するのはちょっと、重い?



(じゃあ、メッセージを送ろうかな……)



焦ってきて、指が震える。



悠馬くん、どこにいるの?

誰といるの?



その時。

……カチャカチャ、と玄関ドアの向こうで音がした。

続いて聞こえたのは、鍵を鍵穴に差し込む、ジャッという濁った音。



「悠馬くん?」



あたしは玄関までかけ寄る。

玄関ドアが開くと、悠馬くんが部屋に入って来た。



「悠馬くん!」

「わっ、ビックリした!どうしたの、鞠奈」



あたしは悠馬くんに抱きつき、
「……何でもないけど、心配してただけ!」
と、悠馬くんの胸のあたりに顔をうずめた。



「何でもないって感じじゃないよ?」



悠馬くんは荷物を持ったまま、あたしを抱きしめてくれた。

背中でビニール袋のガサガサっという音。



「買い物に行ってたんだ?」

「えっ?うん。なんかさー、急に甘いもの食べたくなってさ」


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