Never killer
誰もが寝静まっている深夜にふらりと現れた男 。通称アカツキ。
185センチはゆうに超えるであろうしなやかな体躯に、辺りの暗闇に染まるように合わせたかのような漆黒を思わせるような黒髪を両サイド刈り上げている。大きな二目の黒い瞳。整った鼻筋。ふっくらとした赤い唇。美しい容姿を持ち合わせた男だ。快晴を思わせるような透き通った色をした恐らく宝石でできているであろうピアスをひとつずつつけている。それとは別に情熱の炎を連想させるような深紅のピアスもひとつずつつけているその男は、どこを見つめるともなく辺りを眺めていた。しばらくその場にたちつくしていたがやがて男はその場から去った。
俺は誰だ?という囁きを残して。
男がいた場所は血で染まっていた。また男の服も返り血で真っ赤に染まり尽くしていた。
誰も彼が殺人鬼などと思わないだろう。孤狼の殺人鬼。アカツキ。誰も知らない彼のことを。
彼自身も知らないのだ。自分が誰なのかを。
思い出せないのかもしれない。否、思い出と呼ばれる類はもう捨てているのかもしれない。
どっちにしたって彼が殺人鬼であることに変わりは無い。思い出せない。昔の俺を。かつて普通に生活していた時の自分を。ただ笑って勉強や部活に取り組んでいた時の自分を。時間で言えば10年間。人から見れば短いかもしれない。俺は高校卒業と共に何もかも捨てたのだ。感情を。誰かを愛するという気持ちも。この不条理な世の中を。何ひとつ平等ではない世の中を。1部のものだけが裕福に生活し、苦しんでいる人々を見ようともしない世の中。捨ててやる。どんだけ助けを求めても手を差し伸べてくれないのなら。
こっちから捨ててやる。どうせ助けてくれないのなら。この気持ちを分かろうとしてくれないのなら。こちらが努力する必要は無い。終わってしまえ。こんな世界。壊してやる何もかも。夢も希望も幸せも俺から全て奪ったこの世界が憎い。ただ一つだけ願った普通の生活がしたい。それは他の人々には高望みに映るのだろうか?
自分たちは手に入れているくせに。どんなに努力しても手に入らないものはある。その努力さえさせないのなら今度は俺がお前らから奪ってやろう。It is your turn next. 次はお前の番だ。楽しみにしとけ。俺の復讐を。最高の舞台を整えてお前の命を貰いに行く。
ああ。 楽しみだ。待っていろ。この俺が会いに行くのを。その時はお前の命日だ。
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