Never killer
夜明け前のまだ辺りがほのかに薄暗い時間帯に男は1人で歩いていた。
仕事をやり終えたばかりの男は着ている服が深紅に染まっていることに気づくと僅かに眉根を寄せたがすぐにいつもどうりの無表情を取り戻した。
まだ空にはいくつかの星が出ている。男は自身の名の由来になったであろうものを探す。しばらく空を見続けた男だったが辺りが明るくなるのを感じると暗闇の方へと隠れ去った。

どんなに不条理な世の中だって空と星だけは平等か。笑わせるな。
この世に平等ってものはない。あるとするなら人間がいずれ死ぬってことだけかな。

男は去る途中にそう吐き捨てた。
酷く苦しそうな表情をしながら過去を悔やむかのように。
否、捨てきれないのだ。こんな日の夜は。かつての自分が願っていたであろう夢の世界を。

しばらく休みを貰ったがどうしたらいいんだ?
俺にとっての生きがいはこれだけなのに。それを奪われたら何も残らないじゃないか。
いっその事バレないように仕事すればいいんじゃないか?
などと呟いているとそのつぶやきに答えるかのように祇園からメールがきた。

アル。まさかとは思うが隠れて仕事しようなんて考えてないだろうな?
アルの考えてることなんか俺にはお見通しだからな。
わかってるとは思うがこれは命令だ。背くことは許されない。いいな?
とにかくお前は働きすぎだ。今までの分も合わせて休みを貰ったと考えればいい。それにしばらくしたら大きな案件が入る。それにはお前の力が必要になる。だからそれに備えて準備するとでも思っといてくれ。

P.S 俺はお前のことを弟のように思っている。大切なんだ。
昔からお前はこんな日はどうせ1人でたそがれてるだろう。
お前は俺たちの仲間だ。それを忘れるなよ。
じゃあな。

そのメールを見たアルはしばらくその画面をじっと見つめていたがしばらくすると切ない表情をしながらそれをしまった。

やっぱり祇園さんには分かっちゃうか。
俺の考えなんて。

そうどこか嬉しそうに呟いたアルテミスは先程との様子とは一変して、ほんの少しだか微笑みをうかべて汚れた服を着替えてから住んでいるマンションへと帰っていった。
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