*触れられた頬* ―冬―
「杏奈の奴……やっぱり隠していやがった!」

「え……?」

 モモは凪徒の早足に遅れぬよう小走りになりながら、隣で苦虫を噛み潰したような横顔を見上げた。

 雪は先刻よりも明らかに大粒になっている。

「おやじもきっとグルだっ。あの二人、ロシアの家系にも椿さんの居場所にも、おそらく辿(たど)り着いていたんだ。なのに教えもしないで、この寒い中探させるなんて……どうかしてるぜ!」

 グルルゥ……そんな(うな)り声を出しそうな程、凪徒は悔しそうに歯を喰いしばっていた。

「あの、先輩は何処(どこ)で誰から情報を得たんですか?」

 ふと思う、隠された理由と見つかった場所。

「え? ああ、今朝おやじから変なメールが届いていて、「とにかく何処でも()いてみろ、サーカスでもだ」ってあったから、ダメ元でニクーリンの窓口でも訊いてみたんだ。そしたら「名字はヤマシナじゃないけど、ツバキって名前の女性なら知ってる」って……──んんっ!?」

 ──それって、お母さんが『サーカス』と繋がっているってこと!?

 凪徒も自分の説明した言葉から、モモの気付いた驚くべき疑惑に、目を丸くして立ち止まった。

「そうなのか……? いや……単にあの受付の姉ちゃんが、お前の母さんと知り合いだっただけかもしれない。ちっくしょ、もっとどういう関係なのか訊いてくるんだった! とにかく、その辺は椿さんに会えれば本人から聞ける……急ぐぞ、モモ!」

「はっ、はいっ!」

 慌てて歩を進めた凪徒に、モモも急いで後を追いかけた。



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