*触れられた頬* ―冬―
「(ナギト、幾ら「伝説のブランコ乗り」のひ孫とは云え、あんな細っこい子供みたいな彼女が本当に舞えるのか?)」

 戻ったステージ上で、モモを見上げる数人の団員達が、疑いの目を向け心配をする。

「(まぁ明日のリハーサルを見れば分かるさ。楽しみにしててくれ)」

 凪徒は悠々とした微笑みで、皆と同じように依然ブランコを流すモモを見上げた。

 が、その少女の(おもて)がいつになく笑顔なことに気が付いて、何か不思議な予感がした。

 ──モモ?

 そして上空のモモも。

 ──これなら……いけるかもしれない。

 全身にゾクゾクと湧き上がる何かが膨らみ、肌が武者震(むしゃぶる)いするように粟立(あわだ)った。

 明日──最高の舞を見せる。お母さんと、そして先輩に!

 ブランコをキャッチした手に力を込めた。

 それと共に自分はやれるのだという手応えを(つか)んで、モモはブランコを戻し、凪徒達の許へ小気味良くはしごを降りていった。



 ☆ ☆ ☆


< 145 / 238 >

この作品をシェア

pagetop