*触れられた頬* ―冬―
「やだ、あたしったら、自分の職場のことなのに何も知らないで……恥ずかしいです……」

 モモは園長の胸の中で顔を赤らめた。

「集団生活の係や練習で忙しいのでしょ? とにかく元気そうで良かったわ!」

「先生もお風邪だと聞きましたが……もう大丈夫ですか?」

「ええ、すっかり。さあさ、座って。お茶菓子でも出しましょうね」

「あ、これ……少しですけど、チョコラスク、皆さんで召し上がってください」

 モモはニコニコとソファへ促す園長に手土産を渡し、お茶の準備が整うのを待つ間、腰掛けた部屋の中心からぐるりと全てを目に入れた。

 二年半前と変わらない壁の掲示板、業務机、応接セット。

 モモが暮らした十五年の間にも、少しずつ古びていったのだろうが、それすらも懐かしい光溢れる空間だった。

 二人は会えなかった時間を埋めるように、お互い滔々(とうとう)と話をした。

 いつの間にかお昼を回り、子供達が呼びにやって来たので、久々に施設の食事をご馳走になった。

 食後は約束通り、暇を持て余していたお休みのメンバーと(たわむ)れ、遊び疲れたのだろう、いつの間にか一緒になって昼寝を始めてしまった。


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