カレンダーガール
数日後、いつもより早めにやってきた明日鷹先生。
「少し外へ出よう」
と、私を車に乗せた。

着いたのは、街の外れにある小さなレストラン。
中に入ると、窓際の席に案内された。

スープ、サラダ、前菜、メインの魚料理。
久しぶりの外食はおいしかった。
こんなにゆったりと食事をしたにはいつぶりだろう?
窓から差し込む夕日があんまり綺麗で、この3ヶ月が夢だった様なそんな気になった。

「もうすぐ、春だね?」
食後のコーヒーを飲みながら、明日鷹先生が私を見る。
「剛が君を小児科に呼んでくれる。だから、4月から戻っておいで」
いつもの、優しい声。
「・・・すみませんでした」
私は頭を下げた。
一言では言い尽くせないくらいの迷惑をかけたのが分かっていても、他に言葉が見つからなかった。

明日鷹先生は愉快そうに笑うと、
「いいよ。惚れた弱みだ、仕方ない。退屈しなくていいと思うよ」
笑顔で言ってから、一瞬まじめな顔になった。
「でもね、今回のことは俺たちだけじゃなくて多くの人に迷惑や心配をかけたんだ」
「はい」
それは私にもわかっている。
「親父にも申し訳なかったし、良かれと思って留学先を手配してくれた学長にも、消化器科としての責任を背負う形になた部長にも、色々と噂の的になった和泉先生にも、渦中の君を受け入れるために上司を説得してくれた剛にも、心配かけた君のお母さんにも。みんなに感謝しなくてはいけない。これから2人で、この恩を返していこう」
真っ直ぐ私も見つめながら、諭すように言われた。

「今回の事は一生忘れません。2度と軽はずみな行動をとらないと約束します」
こうして、私も明日鷹先生も春からも同じ病院で勤務できることとなった。
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