カレンダーガール
翌日。
小児病棟。

「おはようございます」
「おはようございます。えっ、桜子先生?」
元気に病棟センターに入ると、病棟看護師のめぐみさんが、びっくりした顔をした。

「ん?何?」
「先生。鏡見ました?目の下に大きなクマが・・・」
「え、嘘」
慌てて、鏡を見る。

確かに、目の下にクマが・・・
そう言えば、昨日寝れなかったから。

「おはよう。凄いクマだね」
剛先生も覗き込む。

「おはようございます」
「何かあった?」
「いいえ。別に」
それ以上は何も言わず、私は勤務に入った。

最近の病院は電子化が進んでいる。
うちの病院でも医師がカルテを手書きすることはなく、すべてパソコンでの作業。
そのため、個々の連絡はメールで行われ、慶弔の連絡や院内のお知らせもパソコン中の病院掲示板で確認する。
勤務に入ったら、メールと掲示板での連絡事項確認がスタッフの日課になっている。

今日もパソコンを開くと何通かのメールが来ていた。
ほとんどはスタッフからの業務連絡。
後は、医師宛の連絡メール。
あっ。
年度末の異動情報。
表示されたリストの一点に目がとまった。

「嘘・・・」

『消化器科 森明日鷹  5月よりアメリカへ赴任』
私の思考は完全にフリーズした。

異動情報はその日のうちにみんなの知るところとなった。
でも、誰も何も言わない。
剛先生も、紗花も、スタッフ達も、みんな遠巻きに見ている感じ。
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