Lemon Sour〜愛を信じたあの頃〜
起きた?

「はよ…」

むにゃむにゃしてるとこ悪いけど…

「おはよう、ごめん!バイトだから急ぐね!」

マップアプリを開いて、バイト先までの時間を調べる…
えっと、駅まで徒歩10分…
走ったとしても一本前には乗れない
電車の本数少ない…

慌ただしく支度を済ませると、彼も上着を着ていた

送ってくれるつもりかな?
でも…正直走らないと…

「私走るね?」

「いや、送るよ
バイト用の原付あるから、乗って行きな?」

眠そうな目を擦りながら、玄関へと向かう

寝起きで、大丈夫かな?


バイクも乗ったことないし、免許のない私は原付も乗ったことない

後ろに乗ると、ユーマは私の腕を掴んで、自分のお腹に回した
昨日のに比べたらなんともないはずなのに
君のお腹に触れる手と指先に、全身の神経が集中してしまう
ドキドキと心臓が高鳴る
昨日の夜は、そんなの感じる暇もなかったから、気づかなかったのに


こういうの…やったことない
すごく新鮮だ

海辺をバイクで2人乗りして走る光景
映画とかで見て、よく憧れ夢見ていたシーン

海辺でもなければバイクでもない

それでも風に靡く髪は気持ち良くて
体を委ねた広くて温かい背中は昨日よりも近く感じて、とても安心した

この背中、生でしがみついてたもん

思い出しては1人照れている


初めてでもないのに…
どうしよう、バイト集中できるかな

片思いの人と体を重ねた事実は
思っている以上に刺激が強いらしい


駅に着いた私はヘルメットを外して、時計を見る
すごい!余裕で一本前に乗れる!

「ありがとう!」

「間に合う?ごめんな、起こしてやれなくて…」

「間に合う!ううん、大丈夫!泊めてくれてりがとう!」

幸せもくれてありがとう、とは、心の中で言っておこう

階段を上り、改札について振り返ると、まだこっちを見ている彼
手を振ると、振り返して、私の姿が見えなくなるまで、手を振り続けてくれた

側から見ると付き合いたての恋人っぽくて、少しくすぐったかった


友達以上に、なれたかな?
また普通に、飲みに誘ってくれるかな?
一線超えてしまったことで、気まずくなったり、ぎこちなくなったりしないかな?

小さな不安を抱きながら電車に揺れる

でも光ったスマホの通知内容はすぐにそんな不安を飛ばしてくれた

「ありがとな!バイトがんば!」

何気ないLINEでも、普通であることが嬉しかった
何も変わらない
また気軽に飲みに行ける

「こちらこそ!がんばる!」

返ってきたスタンプは、かわいい猫
ぬいぐるみにも、猫いたな〜…

約1時間の電車の中、ぼーっと景色を眺めながら、私はバイト先へと向かった
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