手を伸ばせば、瑠璃色の月
新月

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「…あ、蓮弥さん、?」


月が姿を消した休日の、お昼前。

私は、蓮弥さんと約束した通りに新南山駅の改札に降り立った。


この駅は私の最寄り駅から数個隣だということもあり、待ち合わせ時間までは少し余裕がある。

…と、言いたいところだけれど。

早く着きすぎてしまった本当の理由は、私が数日前からかなり今日という日を楽しみにしていたからだと思う。


何せ、父の束縛もあって思うように外出をしてこなかった私が、実に数ヶ月ぶりに休日に予定を入れたのだから。



まだ蓮弥さんは来ていないだろうし、改札の前に立っていれば彼も見つけやすいだろう。

そんな事を考えて、改札近くの柱の前に移動しようと足を踏み出した時。

私の目は、券売機の隣の壁にもたれかかり、スマホを持ちながらどこか宙を見つめている男性の“目”に吸い寄せられた。


白のTシャツに秋らしいこっくりとしたブラウンのジャケットを羽織り、パンツも同じ色でセットアップコーデを決めている、モデルと見間違える程にスタイルの良いその人は、

左目が、太陽に反射して透き通るような碧だったんだ。


いつもは全身を黒色で固め、フードもマスクも手袋もしていた姿しか見ていなかったから、蓮弥さんが色味のある服を着ているのがどうも意外で、どこか嬉しくて。
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